ナビスコカップ決勝戦・柏レイソル×鹿島アントラーズ観戦記
「壁を破りし者達」
| 「感動」、黴の生えた言葉だが、確かにそこに「感動」はあった。多くの人々が不可能と思い、半ば絶望していた時、それは生まれた。 後半のロスタイム、目安として提示された3分を過ぎているのは、時計を見ずとも分かっていた。数十秒前には渡辺毅の果敢なヘッドが、僅かにゴールの枠を外れていた。鹿島のGKの高桑はなかなかゴールキックを蹴ろうとしない。後半30分を過ぎた頃から、鹿島の狡猾な遅延行為は始まっていた。あざとい。しかし、ある部分では感心せざるを得ない。もっともそれが為に、後半42分にはMFビスマルクが或いは久保竜彦の祟りか、遅延行為で2枚目のイエローを受けて退場していた。数的優位を得た柏の最後の力を振り絞ったパワープレーが開始された。しかし一人少ないとはいえ守備に徹した鹿島のディフェンスは容易に崩せるモノではない。筆者は暗い思いで見ていた。 96年、Jリーグ1シーズン制の採用された年、中盤では怒濤の12連勝を記録しながら、終盤、優勝戦線とは無関係なセレッソ大阪・ベルマーレ平塚に足下を掬われ5位に終わった。 前半5分、酒井直樹の右サイド突破から、大野敏隆が先制点を上げた。完璧な形の得点だった。ちなみにこの時、青田一行は競技場外苑に居た。(すいませんどうも) 柏は永遠の優勝候補、という嫌なフレーズが脳裏に浮かんで離れなくなっていた。 そんな惰弱な筆者とは、柏の選手たちは違った。 筆者は浦和サポの某後輩に電話、午後4時からのTBSの録画を依頼した。(つーか柏レイソル様、優勝記念ビデオ作ってくれ) 延長戦、一人少ない鹿島は必死に守るだけだ。北嶋のシュートが惜しくもクロスバーに弾かれる。しかし猛攻も実らず、ついに120分が経過、試合はPK戦へと突入した。柏の数的優位は失われた。 PK戦、先攻は鹿島、後攻は柏、まず鹿島の1人目・阿部が成功、柏は下平が大胆にもど真ん中へ蹴り込んだ。左に飛んだ高桑は取れない。PKで一番成功率が高いのは真ん中らしいが、この場面で蹴る度胸はただ者ではない。2人目・鈴木隆行、「タカユキ」コールに隣にいた同名の友人が反応して鹿島サポに手を振る。なんのつもりだ。そして鈴木のキックを吉田が読み、止める。柏は加藤望が確実に右隅に決める。3人目・本田と北嶋、4人目・相馬と酒井が共に決めて4−3で5人目を迎えた。吉田が名良橋を止めれば、柏の勝利だ。名良橋が蹴る。左だ。吉田は読んでいる。吉田の手がボールを弾いた。柏の選手たちはジャンパーを投げ捨て、吉田の元へと走り出した。しかし、意地の悪い事にボールは力なくゴールマウスへと転がっていった。ずっこけていたのは薩川御本尊様だったろうか? しかしまだ次の大野が決めれば勝ちの状況、悲願のタイトルに手がかかった。しかしこの流れは素直に決まる流れではないような・・・・・・という不安のままに、柏の5人目・大野のシュートは、高桑に止められてしまった。吼える高桑、今度は鹿島のスタンドが沸く番だった。 まさか、ここから負けるのか??・・・・・・さっきのフライングは「柏がもっともタイトルに近かった瞬間」として語り継がれるのか、大野はこのPK失敗を一生トラウマとして抱えて生きるのか・・・・・・もうここまで来ると筆者の心境も理屈ではない。ただひたすら叫び祈るのみである。 この危機に、6度ゴールマウスに立つのは吉田宗弘だった。蹴るのは大船渡からやってきた小笠原満男、ボールは右へ、そして吉田は? 右だ。ボールは? ボールは今度こそ、ゴールマウスの外へと弾き出されていた。黄が沸き、赤が沈む。柏の6人目は、萩村だ。萩村に吉田が何やら囁きかけている。このPK戦で、吉田は蹴る全員に何か言葉を掛けていた。守護神としての存在をアピールしている。萩村が蹴る。冷静に高桑の動きを見極めてから、蹴った。ボールは高桑の逆、左隅のネットに突き刺さった。成功だ!!!!勝った!!!!優勝だ!!!!タイトルだ!!!!今度こそ柏の選手たちが萩村に吉田に向かい走り出し抱き付いた。再び黄色の旗が狂おしく乱舞する。 MVPには奇跡の同点弾の渡辺毅が選ばれ、賞金100万円とナビスコのお菓子1年分が授与された。これが元で上がりまくるDFになってしまいそうだな。(笑) これまでだったら負けていたはずの試合、それを2度に渡って跳ね返して勝利を奪い取った渡辺毅、北嶋、吉田、酒井、萩村、長谷川、大野、薩川、加藤、渡辺光、平山、バデア、下平・・・・・・そして西野朗君。何はともあれめでたい!!!! ところでロスタイムが長いとか文句を言っている神様がおるけど、あれだけ遅延行為したら、そりゃあ仕方無いでしょう。あなたの時計が1分だけ進んでいたのがどうしてかは知りませんけど。 |
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