柏の葉戦記 一見無関係なところから物語は始まります。(またか) 2000年3月30日夜 柏×東京の2日前、霞ヶ関の某所。 「大変です。北海道の有珠山が噴火しそうです」 「うむ、それでは要員室の勤務人数を増やしておこう」 「青田君、明日の日勤を頼む」 「――――はい(汗)」 (まあいいか、1日の朝には一度家に帰れるだろう。着替えて風呂に入って仕度してから柏の葉に行けばいい) 2000年4月1日朝 ――――諸事情により交代の人間は正午にならないと来ない事となった。 ちなみに3月31日に有珠山は噴火している。「ざわざわ」と殺気立つ職場。削られる睡眠時間。機器室の固い床の上で仮眠していた為か、筆者は酷い肩凝りを覚えていた。 「それでは帰ります」 「おう、帰ってゆっくりと休め」 13時30分に鏑木氏と柏駅のみどりの窓口で待ち合わせていた。 「次は乃木坂、乃木坂――――」 乃木坂???? そんな駅が霞ヶ関から柏の間にあったか?? 気を取り直して、柏方面に向かうはずの千代田線に乗る。 再び「近代麻雀」に没頭する。「ピンの一」もなかなか面白い。 数十分後、千代田線は綾瀬駅に到着した。すぐには発車しない。これはいつもの事なので、大して気にも止めずにいた。しかし、電車はいつまで経っても発車しない。 ――――何かが妙だ。 ふと、窓の外を見ると、別のホームから「我孫子行き」の千代田線が発車するところだった。筆者は猛烈に嫌な予感に襲われてホームへと飛び出した。電車の行き先は「代々木上原」に変わっていた。つまり筆者が乗っていた千代田線は綾瀬止まりだったわけね。 我ながらマヌケ過ぎる。注意力マイナス状態だ。電車がまた乃木坂に着いてから気が付くよりはマシだが・・・・・・。 結局、鏑木氏との待ち合わせに十数分の遅刻をしてしまった。申し訳無し。東京サポ・鏑木氏は遅刻した筆者を温厚な笑顔で許して下さった。ふう。 ところで筆者は柏の葉に行くのは、実は初めてだった。 柏の葉のアクセスの悪さは噂には聞いていたので、集合時刻を早めに設定したのだが、上記のような事情で遅刻。(汗) 柏駅では東武の職員が、「柏駅からバスで柏の葉に行くのは混雑しているから無理だ、やめておけ。東武鉄道を使え」との御神託。逆らう意欲も無く、すごすごと従う。東武線に乗り三駅目の江戸川台駅で下車、駅前から東武のシャトルバス(180円)で柏の葉スタジアムへと向かう。東武め、荒稼ぎしとるのう。 柏の葉に到着、まず第一印象。 広い。とにかく広い。スタジアムの中じゃなくて外が、である。スタジアムの周りにはむやみやたらと土地が余っている。これなら10万人収容のスタジアムさえも容易に作れるだろうに。 スタジアムの中、思っていたほど酷くは無かった。ピッチからは離れているが、これは日立柏との比較であって、筆者的には耐えがたいという程ではない。もう少し観客席に角度が付いていればいい、とは思ったが。 鏑木氏の意向により、東京寄りのバックスタンド指定席へ陣を構える。(嘘、である。実のところ、噂に名高い東京のゴール裏とやらを間近で見たかった) 試合開始前から両チームのゴール裏が熱い。東京に触発されたのか、柏のゴール裏の一団もやってくれている。(下着姿の人々) 「もう一枚」コールがかかり、本当にノッて脱いでしまう柏の人々。 スターティングメンバー、柏の左サイドはあいかわらず酒井直樹である。あと下平の代わりに萩村。ようやくリザープに平山の名前がある。どうやら怪我からは復活したようだ、一安心。 試合開始、まずは一進一退かな。東京の動きはなかなか良い。基本に忠実なチームという印象である。 最初の決定機をつかんだのは、東京だが、佐藤由紀彦のシュートは幸いにもゴールの枠を外れてくれた。 24分、柏の華麗な攻撃が炸裂する。10番・大野のクロスを北嶋がバックヘッド気味に流し込む。これは土肥洋一君もどうしようもない。拝啓、トルシエ様、大野と北嶋は五輪代表でセットで使ってやってくれ。(※しかし磐田・高原のキレも凄い) その後はやや押し気味に試合を進めていた柏だったが、時折、東京もサイドアタックとツゥット・アマラオを使ったポストプレーの併用攻撃で対抗する。これがなかなかの精度で侮れない。 40分、東京は何度目かのサイドアタックからセンタリングを上げると、東京王アマラオがヘディングを叩き込み同点に追いついた――――とその時は思ったのだが、後にスーパーサッカーを見て、酒井直樹の魔法の足が下手人である事を知る。死刑囚級だな、貴様。 後半突入、何をするんだ南!!というとんでもない場面があったが、幸いにもボールはゴールの枠を外れてくれて命拾い。これがゴールになっていたら南が現役を引退するまで他チームサポのネタにされていただろうな。 後半15分過ぎ、朗君はカードを2枚切る。酒井に換えて平山、望に代えて朴を投入する。朴がチームに慣れる頃にはレンタル期間が終わっているという自明の理に頼むから気が付いてくれ。町田・玉田・長谷川・杉山らの起用を望む。 平山の起用で左サイドからの攻撃に厚みが出来る事に期待。筆者、鏑木氏に向かって曰く、「今までは片手で戦っていたようなモノですからね、ぼちぼち両手で行きますよ」 23分、その平山が予期せぬ形で貢献する。右サイドからのFKを平山が左足で蹴る。綺麗なカーブを描いたボールを、浅利がワールドクラスのダイビングヘッドで叩き込む。え? 浅利?? いや自殺点です。 頭を抱える鏑木氏、やや複雑そうにそれでも喜ぶ筆者。 しかし東京は不屈だった。衰えぬ運動量、度重なる中盤でのチェックからボールを奪うとカウンターを放ち続ける。一方の柏、負傷明けの平山は今ひとつキレを欠いており、左サイドからの攻撃はあまり効力が無かった。 「追い付かれたらヤバイな」筆者が思ってた頃、PA内での洪大先生のミス(珍しい)を見逃さず、アマラオがボールを奪い取ると南の股間を抜き去り、佐藤ユキヒコが蹴り込んで、東京は同点に追い付く。時に後半30分――――。 鏑木氏が柏の葉に向かって吠え、筆者は恐怖に身を凍らせていた。 再度キックオフ、しかし試合の流れは完全に東京に傾いていた。 この流れは、負け試合だ――――。 筆者は敗北を覚悟した。 (ごめんよ伯爵、あなたとの約束守れそうに無い――――) 筆者は心の中で、遥かな神戸ユニバーの地に向かって謝っていた。 試合は90分で決着せず、延長戦へと突入した。 柏の選手たちの足は止まりかけていた。勝ち点3を確保出来なかった落胆、そして2度も同点に追い付かれた事により、東京に対する得体の知れない恐怖が彼らを支配していた、ように見えた。 対する東京は、2度の同点劇による士気の高揚も作用しているのか、その殺人的な運動量は殆ど落ちない。両サイドから佐藤由紀彦と藤山竜仁が容赦無くサイドアタックを仕掛けてくる。さらには自殺点を与えてしまった浅利悟が狂気すら感じさせる運動量で激しいチェックを仕掛けてくる。 今更ながら、Jリーグはメンタルゲームよのう、と筆者は半ば諦めの境地でゲームを見守っていた。 打開策は、運動量のある選手を投入する事くらいか、控えに残っているのは、砂川誠か――――。 そんな筆者の心の叫びが通じたわけではないだろう。むしろ誰でも思い付く選択ではある。延長前半4分、西野朗君は果敢に3枚目の最後のカードを切り、右サイドで精彩を欠いていた渡辺光輝に変えて、砂川を投入した。 この交代により、柏は劣勢となっていた戦況を幾分かは盛り返す。 再び一進一退の激しいカウンター合戦が続く。筆者と鏑木氏が一喜一憂する。 ふと――――筆者は気が付いた。 洪明甫が中盤の位置に定着している。もはや、守備には戻っていない。代わってディフェンスに下がったのは、柏が誇る守備の便利屋さん、萩村滋則だった。 「何が何でも勝ち点2を奪い取るつもりだなや」筆者にしては珍しく西野采配に共感と頼もしさを覚えた。(なぜ朴建夏がフィールド上にいるのかという問題は別にして) そしてドローが濃厚となり始めた延長後半13分、そんな執念が実る。 左サイド、平山得意の精緻なセンタリングを、洪明甫がトラップで落としたボールを左足で思い切り蹴り抜く。ボールはチェックに入った東京の2人のDFの間を抜け、そしてミラクル土肥洋一の手も届かない位置へ飛び、ゴールネットを揺らした。 劇的なVゴール、しかし――――洪明甫のトラップはハンドではないかという東京側の激しい抗議がフィールド上で行われていた。鏑木氏も「今のはハンドでしょう!!」と怒っている。実のところ、洪明甫のトラップは筆者の目にも「ちょっと怪しく」見えた。(柏の葉にはオーロラビジョン等の設備は無いので、即時再生等は不可能である) 「ここは柏の葉(ホーム)ですから」と筆者は至極不穏当な発言。結局、東京側の抗議は容れられず、柏が勝ち点2を確保、いささか気まずい幕切れとなった。 東京ゴール裏のお怒りはそれなりの凄まじいモノだった。無理も無い、立場が逆ならば筆者でもああなる……、かもしれない。 鏑木氏、「セカンドは、国立で借りを返します」表情が怒ってませんか?(汗) 試合終了後、「東京中華」ミネ氏と合流、関東凶悪会議に雪崩込む。 会議の最中(飲み屋でダべっていただけとも言う)、花ながみね軍曹の(神戸ユニバーに行っていた)友人からの情報で神戸が川崎Fに敗れる、の報が入る。主たる下手人が森川拓巳とも知らずに、筆者は「伯爵がおるなら代わってくれ、これは一体どういうことやねん」などと吠えていた。 また、菅本@北区氏の連れて来たジャンボグランパス君(20000円)の魅力に参る。 ※その夜、スーパーサッカーを見て、洪明甫のトラップが本当にハンドではなかった(と筆者は判断する)事を確認した時はむしろ拍子抜けした。確かに平山からのボールをトラップした瞬間、洪明甫の右腕は怪しい位置に伸びているが、あれはボールをワントラップでシュートする位置に落とすべく、胸を内側に反らせる為に右腕を前方に伸ばしたもので、ハンドではない。切腹倶楽部としては、サーシャ直伝の「神の手」の方がネタ的にはおいしかったのだが、※実は死蔵される事となったネタがある。→こちら ※実のところこの原稿の後半部分は、対京都戦終了後に書かれている。京都戦における功績に鑑みて、筆者の朴建夏選手に対する株は上がっている。(元が低すぎたという説もあるが) |
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