| 柏レイソル2‐1ガンバ大阪 2000ファーストの最終節である。柏は11節・12節で神戸・鹿島に痛恨の連敗を喫した段階で、とっくに優勝の望みなど消滅していた。続く13節・14節で名古屋と富士通川崎に勝利、勝ち点こそ増やしていたものの、この最終節に勝っても「お約束の4位」が濃厚であり、既に筆者のやる気は失われていた。それでもスタジアムに足を運んだのは、わらしべ長者式に「鹿応援団」のnobさんから戴いた(厳密には交換)チケット4枚を持っていたからだ。
さて今回(時制が怪しい)の同行者は、寺山氏(筆者が「青田」であるのと同程度の仮名)と浅田君(実名、今や一部の切腹フリークの間で大人気)。両名とも男だ。なんと色気のない。チケットが1枚余っている事もあり、当日集合間際まで知り合い(主に女性)に声をかけまくったのだが、誰も捕まらない。皆の注目は国立(横浜対市原)と長居(長居桜対富士通川崎)に集まっているのだ無理も無い。こんな消化試合。ぶつぶつ。
柏駅みどりの窓口に先に集合していた筆者と寺山氏の目付きは既に険しい。
「おいオヤジ、なんで娘っ子がおらんのじゃい」
「ワシだって、野郎ばかり三人でサッカーなんぞ見たくないわい」
「その辺の女の子に声かけるか? 『お嬢さん、チケットが余ってるんですけどサッカー一緒に見ませんか』と」
「そうだな、浅田は要らんだろう」(未到着)
「いやあんたも要らん」
「貴様、一人で三人連れて行く気か」
「当然でしょう。そもそも三人引っ掛かったらサッカー見に行く必要すらないか」
「……をい」
とかなんとか言っていると浅田君登場。生粋の関西人である彼は一週間前にどうやらセレッソが優勝しそうと知り、咄嗟にセレッソファンになる事にしたらしい。実に調子のいい男だ。実家が歩いて長居スタジアムに行ける距離にあるのに、セレッソの選手の名前を誰も知らないというのはどういうわけだ? せめて森島・西澤・田坂くらいは……。
「長年、セレッソを応援してきた甲斐がありましたわ」
「一週間が長年か?もう優勝したつもりだな」
「だって今日勝てば決まりでしょう?今日の相手はスゴク弱いと聞きました」
「……確かにな」
筆者すら富士通川崎を信じていない。まあどうでも良かった。
スタジアム到着、いい席だ。nobさんありがとう。
浅田は筆者の入手した券でタダで入場している手前もあってか、澄ました顔をしているが、仕草からガンバを応援しているのがミエミエだ。
とりあえず柏2-1吹田、森下に右サイドを切り裂かれ放題にされつつも柏辛勝。4位確保。ちょっぴり残念そうな浅田、しかし「セレッソが優勝だし〜」という風に気を取り直す。
他会場の結果及び経過がアナウンスされる。横浜2-0市原、長居桜1-1富士通川崎。え??まだ終わってないの??筆者にも意外な事態だ。
電話が鳴る。横浜対市原を観戦していた横浜サポの落石横丁氏だ。国立のオーロラビジョンには富士通対長居の延長戦が映し出されているらしい。
「まだやってます。引き分けなら横浜の優勝。Vゴールなら長居桜の優勝」
……なるほど。
「意外と頑張りますね、フロンターレ」
「浅田、顔が強張ってねぇか……?」
「いや、まさか演出ですよ、演出」
スタジアムの外を歩いていると、もう一度電話が鳴る。
電話が鳴るという事は、まさか……長居桜の優勝だったら、電話なんかする気力は無かろう筈。少なくともすぐには。
「横浜優勝!!!!フロンターレのVゴール」
予想通り、電話の向こうからは高揚した落石君の声。
浦田尚希、一世一代の大仕事。
「わはははははははははははははははははははははは!!」
筆者の大爆笑に道行く人々の注目が集まる。よかろう。皆にも教えてやろう。
「横浜の優勝だってさ!!」
バンバンバンと浅田の肩を叩く。寺山氏も爆笑している。
浅田は3巡目で親の国士無双に振り込んだかのような表情で呆けていた。
この後、国立から横浜の実家に戻っていた落石横丁氏を招き、祝勝会の名を借りた麻雀大会が開催された。歓喜の落石横丁氏、そしてまさに市中引き回し見世物状態の浅田。
「浅田、今日セレッソどうなったんだっけ?」
「負けましたって!!知っとる癖に」
「あ、それロン、親倍」
「浅田、その牌はぬるいんと違うか?」
「仕方ないですよ、セレッソサポなんだから」
「それもそうだな」
「…………」
……浅田の夜明けは果てしなく遠かった。
参考。
某N大学(厳格なカースト制度採用)
91年度入学・筆者、落石横丁。
92年度入学・寺山。
…………。
98年度入学・浅田。
こうして粉々に粉砕された浅田君だが、セカンドステージ後半にはガンバが優勝しそうと聞き、ガンバサポとして復活を遂げる。そうしてまたすぐに粉々に粉砕されるのだが、それはまた別の話である。
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