「牛天の陽炎」
登場人物一覧(敬称略) 青田切腹堂―― |
「第一話」 台風第3号の猛威――――は既に北へ抜け去っていた。影響で鹿島対磐田の開始が一時間遅れただけ、つーか単に炎天下で試合をしたくなかった両チームが台風を口実に試合時間を遅らさせたのではあるまいか。それはともかく――。 ――暑くないですか? とりあえず、食事をしたいという伯爵の意向に従い、柏駅東口キングパフェが売り物の「ウイング」に向かう。伯爵はスパゲッティを、筆者ら3人は揃ってチョコパフェ、ブルーベリーパフェを頼む、真昼間から野郎どもが。 「今回のバトルの内容を確認しときますけど、負けた方が梟状態で写真撮られてそれを壁紙にするという事でよろしいので?」 食欲を満たすと4人はぼちぼちと日立柏へと向かう。やがて軍曹と詠氏、せつな氏が相次いで日立柏に到着。 ――詠さんの話。 試合前、携帯にメールが入る。京都対横浜(鳥取)の情報、さて誰だろう? アドレスはテッシー・・・・・・。「隠密テッシー友の会」サト。さんのようだ(果たして本人である)。さらに瑞穂(名古屋対V川崎)のTAGさんとも携帯で連絡。全国規模で凶悪サイトのリンクが広がっていってないか? おそろしやおそろしや(汗)。 スタメン発表、柏はマジカル吉田、薩川御本尊、洪明甫大先生、渡辺毅、入江(えっ?)、萩村(致し方あるまい)、明神、渡辺光輝(もう治ったのか)、大野、北嶋焼肉桜吹雪、加藤望。ベンチには黄善洪が入っている。あと根引、玉田、砂川、南、ちなみにマウリシオはベンチにもいない。――――日本人と同等の働きしか出来ないなら要らないといってバデアを切ったらしいが、もしかして日本人以下の働きならいいのか? 再び確認。 試合開始前のセレモニーで大西弘幸審判の120試合目を記念して花束の贈呈が行われた。なんでもこの大西という主審、あまり評判がよろしくないらしい。片桐、越山らと同等のネームバリューを誇ると聞き、物凄く悪い予感が漂う。 さて試合開始――――――直後、柏ゴール前の混戦(こちら側からは遠くてよく見えなかった)、あっさりと神戸先制。和多田だ。目の前で歓喜に沸く伯爵&軍曹、そして神戸寄りのV川崎サポ詠氏。ゴール裏がそのまんま移動して来たかのような熱狂ぶりである。 ――よりによって和多田かい・・・・・・。スピードキングだけのイロモノキャラ(プロ野球に昔居た左右投げのピッチャーみたいなもん)と思っていたら洒落にならんのう。 柏も反撃する。しかし悉く――とは言わないまでも、攻撃の半分以上はこの日が誕生日らしい(軍曹談)入江徹の左サイドで粉砕された(ように思えた)。ちなみに筆者たち一行の目前10メートル程度の距離である。 ――入江がどうこう以前に、平山の代わりを期待したらいかんか、ある日突然、名波の代わりをやれと言われた金沢浄並みに不幸な奴。本音を言えばどうして左サイドに玉田でなくて入江を起用するのか全く理解出来ないのだが。 入江に野次を飛ばす前の席の軍曹の後頭部を落石横丁氏のノートPC(その場にあった物で一番堅そう)で叩き割りたい衝動と筆者は必死で戦っていた。 前半20分、柏ゴール前(前述の通り遠い)の混戦で神戸の選手がオーバーヘッドキックを繰り出した。ジャストミートされたボールはワンバウンドしてゴールに叩き込まれた。漫画のようなビューティフルゴール。2点目。またしても和多田かい!! 目の前で踊る3人。そして面白ければどちらが勝っても良い2人(落石・薄黄)組もはしゃいでいる。――――貴様ら裏切ったな(厳密には裏切りというのかどうか)。 ――過去の観戦記録で筆者は柏が2点のビハインドを逆転したのを見た事はない。かなり絶望的な状況となってしまった。時間が早いのだけが救いである。 ――しかし前半27分、柏は明神がバウディール(何処にいるのやら)ばりのミドルシュートを突き刺して1点差と追いすがる。GK武田一歩も動けず。1-2。 この前後からだろうか、大西主審の瞑想もとい迷走ぶりが目に付き始める。神戸PA内の神戸側(吉村光示らしい)のハンドに見えたプレイを流す。ブチ切れる柏サポ。 ――軍曹の声援。 30分に柏の大野、37分に神戸の河にそれぞれイエローが支給される。前半終了、大西主審どちらかといえば神戸寄りに思えるジャッジに柏側のスタンドは騒然としている。 ハーフタイム、鳥取(の試合をテレビで観ているサト。さん)や瑞穂(現地のTAGさん)と情報が飛び交う。この世の何処にいるのかわからないやまかん氏(なんでも旅先らしい)からも携帯に連絡が入る。それにしても東京3-0川崎F、アマラオハットトリックってなんやねん!? 川崎F、ナビスコとリーグどっちが大切やねん貴様ら?? ナビスコで優勝したってJ2に降格せずに済むわけやないねんで?? ――ハーフタイムの筆者と落石横丁氏(もしかしたらうすきいろ氏だったかも)の会話。 青田君の提案。 そうそうこのハーフタイム、妙齢の女性から筆者は声をかけられた。 後半開始。柏は後半の頭から加藤望に代えてついに大騎士黄善洪を投入した。しかし入江に代えて玉田は投入されない。なんでやねん。 さて、大西主審の迷走は止まらない。59分に菅原、61分に海本に警告が出される。ちなみに検索をかけたらこんなデータが発見された。カードが多い審判が無能と一概には言えないだろうが、この日の大西主審は完全に試合のコントロールに失敗していたように見えた。自身の能力の限界をカードの支給で補おうとしていたようにすら見えなくも無い。 このあたりから右サイドの渡辺光輝の突破が切れ味を見せ始める。光輝はセンスと得点力が武器というイメージがあったのだが、この日の光輝はドリブルも凄かった。神戸の対面の選手が駄目だったという可能性は考えない事にしよう。再三、光輝の右サイドからのセンタリングが神戸ゴール前を強襲する。何時同点ゴールが決まってもおかしくない猛攻。しかしなかなかゴールを割る事が出来ない。萩村のヘッドは無情にもバーを叩き、北嶋のヘッドもキーパー正面を衝く。 79分、この試合を実質的に支配していたとも言えるファンタジスタ120試合出場の大西主審がこの日最大の大仕事をやってしまう。柏の右サイドを突破する光輝(?かな)を背後から引っ掛けた海本に2枚目のイエローを提示。自動的に海本は退場となる。さらば「花の」慶治。 海本が亀のようにのろのろと退場して、ピッチから出て行く(「花の」慶治やったら松風に乗って颯爽と出ていかんかい!!)間に柏は入江に代わって砂川を投入した。むろん砂川はいい選手だが、左サイドの交代なら玉田が至当ではないのだろうか?? 何はともあれ、神戸は10対11で戦わなくてはならなくなった。柏はパワープレイで怒涛の猛攻を続けた。洪明甫は既に中盤に上がっている。北嶋と黄が変幻自在のポストプレーを見せる。薩川御本尊様がなぜかPAにまでドリブルで切り込んでいく。形振り構わない放り込み戦術まで駆使して迫る。しかしフィニッシュがなかなか決まらない。 神戸は河に代えて、小島卓を投入した。こちらも形振り構わず守りを固めて来た。ありとあらゆる術策を弄して時間を稼ぎ逃げ切る腹だ。 「小島だ。小島だよ、本当に生きていたとは」(どよどよ) ――ロスタイムは5分だった。 「第二話」 ロスタイム表示は5分間だった。神戸が色々と時間稼ぎをしていたので(退場になったのにのろのろと出て行く「花の」慶治とか交代でのろのろと出て行く河とか、接触の度にいちいち倒れる選手とか、まあ無理も無いか)、むしろ短いくらいではと思ったが。5分間あれば大概の事は可能だ。スペイン対ユーゴスラビアの例もある。 相手が一人少なく守りに入っている事もあり、柏の猛攻は続く続く続く、しかししかし何かに呪われたかのようにゴールを割る事は出来ない。これだけ攻めているというのに――。前節のV川崎戦の不甲斐ない戦いぶりとは全く違う。柏の選手たちの死力を尽くした戦いぶりに、筆者は感動すら覚えた。(それ以前の問題として2点も先制されるなよと嘆きたいのもあるが) 「これだけ攻めても駄目な日もある。それがサッカーだ。今日は負けても、よい気分で帰れる――――ん?」 ――何か忘れているような気がするぞ・・・・・・。 「背景バトルしとるんだったァァ!! 負けたらエライ事になるんじゃああああ!!!!、こらぁ北嶋ァァァ、黄ンンンン!!!! 石に齧り付いてでもどうにかせんかいぃぃぃ!!!」 ロスタイムも4分を過ぎようとしていた頃、ミドルレンジでこぼれ球を受けた明神が右足を振り抜いた。GK武田も反応してダイビングする。しかしボールはその手の先を通り過ぎ、ゴールネットを揺らした。 観客席で黄色い波が揺れる、湧き上がる。 「よっしゃあ明神んんんん!!!!」 起死回生、2-2の同点。 「延長はゴメンだ。あと1点取って決めてしまえ」 しかしこの直後、真の恐怖が柏を襲った。 ハーフラインよりもやや柏陣内寄りの位置で、神戸はスローインを得た。スローアーが出したボールは、中田ヒデのスルーパスばりの鋭く低い弾道で最前線(というか柏のバックラインよりも遥かに前方)のFW布部の元へと届いた。一瞬のうちに最前線でどフリーの布部がGKと1対1になる。 「ゐ!?」 ※スローインにオフサイドは適用されない。(大西主審もその事は知っていたようだ) ――誰がスローアーだったのかは言うまでも無い。神戸名物和多田のロングスロー!!!! 戦前でトップページのネタにしたくらいだ。もちろん失念していたわけではない。あの位置から?あんな角度で?あんな速さで?出せるというのか??? 「ちょっと待てィィィ!!」 ――――筆者の頭の中で、伯爵が「ルパン、切り札とは最後まで取っておくものだ」(ルパン三世カリオストロの城(陽)より)と哄笑している図が浮かんだ(妙に冷静だな)。一瞬のうちに奈落の底に突き落とされる感覚(福本伸行の漫画でも想像していただきたい)。 しかし――この絶好機、布部のシュートは枠を外れてくれた。 ――直後に後半終了。試合は延長へファーストステージだったら、「また延長かよ」とうんざりするところだが、さすがにこの日ばかりは文句を言う気にはならなかった。 「ところで伯爵、ドローだったらどうするか決めてなかったけどどうします?」 「第三話」 前半戦では大西主審を絶賛していた軍曹だが、海本の退場で見解を改めたらしい。 延長戦が始まった。攻める柏、守る神戸の図式。何しろ神戸は10人しか居ない上に、サイドアタッカーの韓国代表・河を守備固めでベンチに下げてしまっている。延長前半5分に神戸は吉村に代わって長田を投入、多分、攻撃のコマなのだろう。一方柏もこの日獅子奮迅の働きを見せていた渡辺光に代わって、ようやく玉田を投入。 「西野さん、玉田をここで使うつもりだったんだよ」 神戸も時折、思い出したかのようにカウンターを仕掛けようとはするのだが、脅威となるような攻撃はひとつとして繰り出せない。切り札和多田のロングスローも「一度見せた技は二度通用しない」の法則に従い封じられている(忘れた頃にやられたらコロリとやられそうだが)。 孤立する大西主審が黄善洪と小島にイエローなど配布している。 「小島、どうせならもう一枚貰っとけ、貴様、柏魂を忘れたわけではあるまい」 柏の猛攻は実らないまま延長前半も終了。 ――瑞穂のTAGさんと詠さんの通話記録。 延長後半、柏は引き分けなど全く考えていない。相手方のゴールキックのボールまでセットしに行って、プレーを促している。サイト運営者としては負けた時に失うモノの大きさを考えると「ドローでもいいや」という日和った着想がないわけでもないが、この試合を引き分けで良しとしているようでは、柏の優勝などありえない。そうだ、攻めろ! さらに攻める。攻める。攻める。 ――運命の刻は延長後半12分、右サイド角度のない位置まで切れ込んだ黄善洪がシュートか折り返しを上げる。そのボールが神戸の選手に当たって、ゴールラインを割る。コーナーか――いや大西主審はペナルティスポットを示している。PKか?? PKだ! 勝利を確信した筆者は、アウェイ側の席へと急いで戻った。予想通り、伯爵と軍曹が石化している。我ながら悪趣味である。 PKキッカーは――北嶋だ。なんだ明神に蹴らせないのか。観たいぞ明神のハット(いくらなんでもそれはない)。 北嶋が蹴った――。キーパーの逆にボールは飛んだ。ゴールネットが揺れた。 こうして118分の死闘に幕が降りた。柏側からすると出来過ぎなぐらいの劇的逆転勝利。日立柏が沸く。筆者は安堵と歓喜に浸っていた。 ふと――――強張っている伯爵の頬を罰丸の手で突っ付いてみた。反応が無い。 ――軍曹は叫んでいる。 ――詠氏。 ――落石・薄黄色組。 こうして史上最悪のバトルは終戦した。 そして――――伯爵史上最悪の夜はまだ始まったばかりであった。 「第四話」 とりあえず筆者一行は柏駅へと向かっていた。伯爵の黄色い背中に哀愁が漂っている。病床の平山智規にもこの姿を見せてやりたかった。道すがらまた全国各地と携帯で連絡など取り合う。随分と便利な世の中になったものだ。 やまかんさんとの通話記録。 サト。さんと伯爵はまたしてもサテライトのゲームで背景バトルをやる気らしい。なまじチームの本拠地が近いのも考えものだ(笑)。 名古屋とV川崎の試合は結局ドローだった模様。 とりあえず駅の手前で夕食を摂ろうという話になる。何の因果か偶然か、一行が立ち寄ったファミレスの名前は――えっ?? 看板写真。 「最終話」 さてここから宿への移動中に発生した惨劇については伯爵自らが書いているのでそちらを参照して戴きたい。 宿に到着するとスーパーサッカーを観た後に、落石氏が持ち込んだユーロ2000セミファイナル2試合の上映会を行う。フランス対ポルトガル、イタリア対オランダの順である。さすがに一同疲労が出て来たのか、フランス対ポルトガル戦が終わる頃には全員が熟睡していたという。哀れイタリア&オランダ。 翌朝(といっても昼だが)――あわよくば撮影を逃れてどさくさに紛れて関東から脱出しようと思っていたらしい伯爵を確保。 「いけないいけない忘れるところだった」 ――――こうして伯爵との長い戦いはひとまず終焉を迎えた。来年もこんな戦いが続くとしんどいので、神戸には来年はJ1でない別の世界に行っていて欲しいものだ、と祈らずにはいられない。 (完結) |
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